.単純移動平均

■ 考案者: ジョセフ・グランビル氏(Joseph Granville)が1960年代に紹介
■ 考え方
時系列データの不規則な上下変動を排除して「平滑化」を図り、上昇、下降、停滞などの長期的な傾向(トレンド)を見極めます。
■ 単純移動平均線の特徴
単純移動平均線とは、所定の期間の価格(通常は終値を使用)の平均値です。
10日間移動平均線は、過去10日間の終値の平均値、
10週間移動平均線は、過去10週間の終値の平均値、
10年間移動平均線は、過去10年間の終値の平均値です。
例えば、第1日目が10円で、毎日10円ずつ上昇している相場があるとします。
10日目は、100円になりますから、
10日移動平均線は、(10+20+30+40+50+60+70+80+90+100)÷10日=55円です。
11日目は、110円になりますから、
10日移動平均線は、(20+30+40+50+60+70+80+90+100+110)÷10日=65円です。
第1日目の10円を引き、第11日目の110円を加えて、1日間移動させることから、「移動」(Moving)「平均」(Average)線と呼びます。

【特徴1】
10日移動平均線は、毎日の終値で10日連続買い付けると仮定した場合、平均的な買いのコストだと想定できます。(注:正確には、出来高を加味すべきです。)
・価格が移動平均線を上回っている ⇒ 平均的な買い方に含み益が発生している
・価格が移動平均線を下回っている ⇒ 平均的な買い方に含み損が発生している

【特徴2】
直近の新しい価格を「加えて」、古い価格を「引き」ますので、「加えた価格」と「引いた価格」の大小により、単純移動平均線は増減します。
・新しい価格>古い価格 ならば、単純移動平均線は大きくなります。
26日移動平均線が前日よりも大きくなったということは、26日前の価格よりも高い、ということで、上昇トレンドの可能性が高いことになります。
一目均衡表の「遅行線」(遅行スパン)は、この考え方です。
・新しい価格<古い価格 ならば、単純移動平均線は小さくなります。
26日移動平均線が小さくなったということは、26日前の価格よりも低い、ということで、反落の可能性が高いことになります。

【特徴3】
短期の移動平均線は、短期的な方向性(トレンド)を表し、長期の移動平均線は、長期的な方向性(トレンド)を表します。
大きな価格変動が起きた場合、短期の移動平均線はすぐに反応できますが、長期の移動平均線はすぐに反応できません。
このため、短期と中期と長期の移動平均線を組み合わせることで、トレンドの方向性、転換を見極めることになります。

■ 応用:
単純移動平均線は、「ボリンジャー・バンド」「乖離率」などに応用されています。
7月の毎日の平均気温が30度だとします。7月の平均気温ですから、グラフ上では、7月16日辺りに記録するのが通常だと思います。
しかしながら、単純移動平均線では、7月の平均気温は8月1日に記録します。
【乖離率】
7月の平均気温が30度の時、8月1日の気温が35度まで上昇したとします。
35度は、これまでの平均気温30度から5度高めに乖離していますので、トレンドを逸脱しているのではないか、と思います。これが「乖離率」の考え方です。
【ボリンジャー・バンド】
7月の平均気温が30度の時、8月1日の気温が35度まで上昇したとします。
7月の気温は、平均気温30度から、大凡±4度程度で推移していたとします。
35度は、平均気温30度+4度=34度よりも高いことになりますので、「異常値」の可能性が高いといえます。これが、「ボリンジャー・バンド」の考え方です。
ボリンジャー・バンドで、「単純移動平均線」を使用し、「指数平滑移動平均線」を使わない理由は、 ボリンジャー氏は、「標準偏差」で「単純移動平均線」を使用していることで、複雑化を避けるため、と述べています。

■ 短所
単純移動平均線は、過去の一定期間の価格の平均値ですから、上昇(下降)トレンドを形成している場合、トレンドから遅れがちになります。
この短所を補うため、最初の頃の価格よりも、最近の価格に、相対的に重点を置いた移動平均線が考えられ、「累積加重移動平均線」「指数平滑移動平均線」と呼ばれます。
また、10日間移動平均線だけではなく、より短期間(5日間以内など)の移動平均線を組み合わせることにより、より短期のトレンドを見極める方法もあります。

【3日間移動平均線】

    Simple MA Weighted MA Exphonential MA
終値 単純移動平均 加重移動平均 指数移動平均
1 1      
2 10      
3 100 37 54 37
4 1,000 370 535 518
5 10,000 3,700 5,350 5,259
6 5,000 5,333 6,000 5,129
7 500 5,167 3,583 2,814

上表は、変動を極端にした価格の、3日間の「単純」「加重」「指数」移動平均です。

 それぞれの日への加重が1/3ですから、価格が10000まで上昇しても、単純移動平均は、3700で、最新の相場状況を反映しているとはいえません。

 直近の価格から3倍、2倍、1倍と加重し、6(=1+2+3)で割ることで、最新の価格の動きを反映させます。
・指数移動平均=(10+100+1000+1000)÷(3+1)=527 (※表の数値とは違っています。)
 直近の価格を2倍して、最新の価格の動きを反映させます。
 ※詳細は、「指数平滑移動平均線」の項目で説明させていただきます。

■ 使い方のポイント
@トレンド(方向性)の明確化・確認
相場変動をならすことで、相場の方向性、流れが明確になり、上昇トレンドなのか、下降トレンドなのか確認することができます。
A支持線(サポート)と抵抗線(レジスタンス)
移動平均線は、上昇トレンドならば、支持線(サポート)として、下降トレンドならば、抵抗線(レジスタンス)として作用します。

■ グランビルの法則
1960年代、ウォール街の通信社の記者だった、ジョセフ・グランビル氏が考案した、移動平均線を活用したテクニカル分析です。
【買いシグナル】
@中・長期線が下降の後、横ばいか上昇傾向にある時、短・中期線が、中・長期線を下から上に突き抜けた場合(※ゴールデン・クロスといいます)
A中・長期線が上昇し続けている時、短・中期線が、中・長期線の下に下降した時
B短・中期線が上昇し続けている中・長期線の上にあり、中・長期線に向かって下降したが、突き抜けず再び上昇した場合
C短・中期線が下落し、下落している中・長期線から下に大きく乖離した時
【売りシグナル】
D中・長期線が上昇の後、横ばいか下落している時に、短・中期線が中・長期線を下に突き抜けた時(※デッド・クロス、といいます)
E中・長期線が下降し続けている時、短・中期線が、中・長期線の上に上昇した時
F短・中期線が下降し続けている中・長期線の下にあり、中・長期線に向かって上昇したが、突き抜けず再び下落した場合
G短・中期線が上昇し、上昇している中・長期線から上に大きく乖離した時













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